日程
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Journal Club
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Progress report
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(8:30〜9:30)
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(9:30〜12:30)
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2008年(平成20年)
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Group-1
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Group-2
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6月20日(金)
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- 担当者:福島 聡
- 論文:Identification of cells initiating human melanomas.
Tobias Schatton1 et al.
Nature 451: 345-349, 2008(Jan.17)
- 要約:自己複製能と分化能を持ち、腫瘍の増大に欠かせない「tumor-initiating cells(癌源細胞)」がこれまでに血球系悪性腫瘍や固形癌で同定されてきている。もしこれら少数の細胞集団が腫瘍の進展に関与しているのであれば、癌源細胞をターゲットとした特異的治療は現行の全身的な治療に抵抗性の癌を根絶できるかもしれない。筆者らはヒト悪性黒色腫の癌源細胞を抗癌剤耐性メディエータであるABCB5の発現によって定義し、これを標的とすることで、腫瘍を抑制できることを示した。悪性黒色腫患者のABCB5+細胞は未分化な表現型を示し、ABCB5の発現は臨床的な癌の進展度と関連があった。マウスへの異種移植モデルでもABCB5+細胞はABCB5-細胞に比べて悪性度が高かった。またIn vivoでの解析で、ABCB5+細胞の自己複製能と分化能が確認された。すなわち、ABCB5+細胞からはABCB5+細胞とABCB5-細胞の両者が発生したが、ABCB5-細胞からはわずかにABCB5-細胞が発生したのみであった。さらにABCB5に対するモノクローナル抗体をマウスに全身投与したところ、ABCB5+癌源細胞に対するADCC活性が誘導され、腫瘍の抑制効果が観察された。
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- 担当者:井上 光弘
- 論文:A20 is an antigen presentation attenuator, and its inhibition overcomes regulatory T cell-mediated suppression.
Song, X. et al.
Nature Medicine 14(3): 258-265, 2008(March)
- 要約:制御性Tリンパ球(Treg)は、自己免疫応答を抑制するだけでなく、抗原特異的腫瘍免疫を減弱させ、効果的な抗腫瘍免疫療法にとって障害となる。しかしTregを選択的に除去あるいは抑制することは困難である。本論文では樹状細胞(DC)におけるTNFシグナル経路を介したNFκBの抑制が、DCの活性化、及びTregの抑制に関与し、抗腫瘍免疫応答の増強につながることが示されている。A20は細胞質に存在するジンクフィンガーモチーフを持つ蛋白質であり、TNFシグナル経路において、TRAF2やRIPとの相互作用によってIKKγを抑制することにより、NF-κBの活性化を抑制する因子である。A20をsiRNAでノックダウンしたDC(siA20-DC)は、抗原提示におけるcostimulatory moleculeの発現や、proinflammatory cytokineの産生が亢進しており、このDCにより抗原提示を受けたT細胞の免疫応答の増強が認められた。またsiA20-DCを免疫したマウスにおける腫瘍拒絶実験では、Tregの抗腫瘍免疫に対する抑制的な働きが減弱することが示された。さらにsiA20-DCにより抗原提示を受けた腫瘍浸潤性Tリンパ球(TILs)は、IL-6、TNFαなどのcytokine産生能が亢進しており、抗原特異的な免疫応答が増強し、T regの存在下でも充分な増殖活性を認めた。またsiA20-DCで免疫されたマウスのTILs中のT regの免疫抑制効果の減弱が認められた。本論文において、A20がpriming phaseおよびeffector phaseの両方における抗腫瘍免疫応答の減弱因子であり、A20機能の抑制によるDCの活性化によって、Tregを直接標的とすることなく、Tregによる免疫抑制を上回る抗腫瘍免疫応答をもたらし得ることが示された。
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5月30日(金)
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- 担当者:松永 雄亮
- 論文:Functional and genomic profiling of effector CD8 T cell subsets with distinct memory fates.
Sarkar S, et al.
J Exp Med. 205: 625-640, 2008
- 要約:死ぬ運命にあるエフェクターCD8 T細胞と生き残りメモリー細胞になる運命にあるエフェクター細胞の違いを理解すことはメモリー細胞の発生を考える上で大きな課題である。本研究では、ターミナルエフェクターとメモリー前駆細胞の包括的な表現型、機能、ゲノムプロフィールが調べられた。これら二つのエフェクターサブセットを区別するために、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG-1)をマーカーと使用した。KLRG-1の発現量で区別したCD8サブセットは、異なる細胞運命をたどるにも関わらず、極めて近い遺伝子発現プロフィールを示しキラー細胞としての活性を有していた。しかしながら、メモリー前駆細胞細胞だけがIL-2産生能を有していた。そこで今回、細胞傷害性、グランザイムBの発現、炎症性サイトカイン産生能に加えてIL2産生能を有する新たなエフェクターサブセットが定義される。このエフェクター細胞は自己複製能と再刺激に対する速やかな免疫応答能を有する長期生存メモリーT細胞に分化した。ターミナルエフェクターとメモリー前駆細胞の運命を制御するシグナルを調べた結果、感染後期に持続的な抗原刺激を受けた細胞はターミナルエフェクターに分化する傾向にあった。重要なことに、急性感染の終末期における抗原刺激を短くするとメモリー形成が増強された。したがって、これらの知見はメモリー分化におけるdecreased potential modelの考え方を支持するもので、抗原刺激の持続期間がメモリー形成における重要な調節因子であることを示すものである。
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5月23日(金)
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- 担当者:池田 徳典
- 論文:TL1A-DR3 interaction regulates Th17 cell function and Th17-mediated autoimmune disease.
Bhanu P. Pappu et al.
J Exp Med. 2008(Apr.)
- 要約:自己免疫疾患発症に関与するTh17細胞の分化や増殖等の制御機構は、充分に判明しているわけではない。この論文で著者らは、tumor necrosis factor receptor superfamily member (TNFRSF)であるdeath receptor 3 (DR3)が、Th17細胞に高発現しており、このリガンドであるTL1Aとの相互作用によって、effector Th17細胞の増殖が促進されることを示した。また、TL1A-/-マウスを用いて検討した結果、DCに発現しているTL1Aが、Th17細胞の分化と増殖に重要であり、このマウスにEAEを誘導した場合、WTマウスと比較して、clinical scoreが低値で、病理学的変化も軽微であることが判明した。
このような実験結果から、TL1A-DR3 pathwayは、Th17細胞の増殖機能や自己免疫疾患発症に、深く関与している可能性が考えられた。
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- 担当者:頼仲 玉珍
- 論文:NKG2D-Deficient Mice Are Defective in Tumor Surveillance in Models of Spontaneous Malignancy.
Nadia Guerra et al.
Immunity 28: 571-580, 2008(Apr.)
- 要約:腫瘍免疫にNK細胞が関与することは、以前から知られていた。NKG2D stimulatoryレセプターのリガンドは、癌細胞株でしばしば高発現しNK細胞感受性の原因となっている。しかし、癌の自然発症モデルでの腫瘍監視におけるNKG2Dの役割については、検討されていない。本論文では、2つの癌発症トランスジェニックマウスモデルを利用して、NKG2D遺伝子の標的破壊により、NKG2DはNK細胞の分化には必要ないが、上皮およびリンパ系悪性腫瘍の免疫監視に重要な役割を担っていることが明らかにされた。両方のマウスモデルにおいて、ex vivoで腫瘍細胞の表面にNKG2Dリガンドの発現が観察された。前立腺ガンモデルにおいて、NKG2D-KOマウス由来の悪性度の高い癌細胞では、NKG2Dリガンドの発現量が、野生型マウス由来の癌細胞と比べて高く、これはNKG2Dに依存するimmunoeditingの存在を示唆した。これらの結果は、腫瘍原発巣の免疫監視にNKレセプターが重要な役割を演じていることを示すものである。
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5月9日(金)
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- 担当者:入江 厚
- 論文:T cell receptor-instructed αβ versus γδ lineage commitment revealed by single-cell analysis
J. Exp. Med. 2008 (Apr.28)
- 要約:αβとγδT細胞系列は、同一の先駆細胞から胸腺で分化する。これらの細胞系列への分化がどの段階で決定されるのか、TCRからのシグナルがこの過程にどのように寄与するのかは明らかでない。最近になって、強いTCRシグナルはγδ系列への分化に有利であるが、比較的弱いシグナルはαβ系列への分化を促すことが示された。この結果を説明する2つのモデルが提唱されている。第1のモデルは、どちらの系列に分化するかの決定は、TCRの発現の後であり、TCRを介したシグナルが、どちらの系列に進むかを直接リンパ球に指示するというのものである。もう1つのモデルは、分化の決定はTCRの発現前であり、TCRを介したシグナルは、単にどちらの系列を選択したかを確認するものでしかないというものである。1個のT前駆細胞の運命をたどることにより、本研究ではαβ、γδいずれの系列に進むかの決定は、TCRの発現前には起こらないこと、およびTCRシグナルを調節することにより、1個のTCR+T細胞に由来する娘細胞の系列を、もう一方に変更できることが示された。
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5月2日(金)
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- 担当者:林田 裕希
- 論文:Spatial and mechanistic separation of cross-presentation and endogenous antigen presentation.
Sven Burgdorf et al.
Nature immunology 9: 558-566, 2008(Mar.)
- 要約:ウィルス感染あるいは腫瘍に対する免疫反応には、MHCクラスIを介してウィルスや腫瘍抗原ペプチドを提示する樹状細胞による細胞傷害性CD8+T細胞の活性化が必要である。細胞外抗原をMHCクラスIを介して提示(‘cross-presentation’)する細胞内のメカニズムは明らかになっていない。著者らは、可溶性抗原におけるcross-presentationは、細胞内抗原のMHCクラスIへの搭載が行われる小胞体(ER)とは別の、初期エンドソームで起こることを示した。効率よいcross-presentationには、MHCクラスIへの搭載に必須のTAPが初期エンドソームへ移動することが必要で、その移動はエンドトキシンによって引き起こされ、TLR4およびシグナル伝達分子MyD88依存性であった。cross-presentされる抗原のエンドソームから細胞表面への輸送は、エンドソームの輸送を妨げるprimaquine(抗マラリア薬)により阻害された。このようにcross-presentationは、細胞内のMHCクラスI拘束性抗原提示とは、空間的にも機構的にも区別されるものであり、微生物分子パターンをもつ抗原へ偏って行われる。
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4月25日(金)
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- 担当者:真崎 雄一
- 論文:Growth factor-induced MAPK network topology shapes Erk response determining PC-12 cell fate.
Silvia D. M. Santos et al.
Nature Cell Biology 9: 324-330, 2007 (Sep.)
- 要約:MAPK (mitogen-activated protein kinase) シグナル伝達系は、広く保存されたシグナルネットワークであり、様々なgrowth factorからの刺激を細胞内へ伝え、細胞の運命を司るシグナルモジュール(機能単位)である。しかしながら、異なるレセプターから入ってきた刺激が、どのようにして、特異的な生物応答をもたらすのかということついては、未だ不明である。本論文では、神経分化のモデルとして使用されるPC-12細胞を用いて、それぞれのgrowth factorからの刺激が、どのようにMAPKシグナル伝達系を伝わり、その特異性をもたらしているのかについて調べている。最近報告されたmodular-response analysisによるリバースエンジニアリング的手法を用いて解析した結果、EGF (epidermal growth factor) によって刺激されるのかNGF (neuronal growth factor) によって刺激されるのかによって、MAPKシグナル伝達系のタンパク質の活性化に違いがあることが明らかになった。NGF で刺激をした場合には、Erk1/2とRaf1の間でポジティブフィードバックが認められたにもかかわらず、EGFで刺激した場合には、ネガティブフィードバックが見られた。さらに、NGFで刺激した場合、Erkの活性化には、スイッチのonとoffのような2つの状態が見られた。これらの結果から、それぞれのgrowth factorのシグナルがMAPKシグナル伝達系の活性化の形態を決定し、結果として細胞の運命を支配していることが示された。
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4月18日(金)
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- 担当者:平田 真哉
- 論文:Control of Treg and TH17 cell differentiation by the aryl hydrocarbon receptor.
Francisco J. Quintana et al.
Nature (23,Mar. 2008), online
- 要約:Foxp3を発現する制御性T細胞(Treg細胞)は、自己免疫反応を末梢において抑制していると考えられている。また、最近の研究より、Treg細胞の分化は、(少なくともin vitroでの分化誘導において)IL-17を産生する炎症細胞であるTH17細胞と相互に関係していることが分かってきた。Treg細胞の機能障害とTH17の調節障害は、自己免疫疾患を発症させたり、重篤化すると考えられるが、これらのTreg細胞とTH17細胞の発生をコントロールする生理学的な経路については、ほとんど分かっていない。今回、著者らは、転写因子であるaryl hydrocarbon receptor (AHR)をマウスにおけるTreg細胞とTH17細胞の分化のregulatorとして同定した。このAHRはリガンドによって、活性化されるが、AHRのリガンドの一つである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinによるAHRの活性化はTreg細胞を誘導して、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制した。いっぽうで、6-formylindolo[3,2b]carbazoleは、Treg細胞の発生を抑制して、TH17の発生を促進し、これによりEAEが重篤化した。以上のことより、AHRは、リガンド特異的な方法で、Treg細胞とTH17細胞の発生を制御し、免疫制御療法の新たなターゲットとなると考えられる。
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4月11日(金)
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- 担当者:今井 克憲
- 論文:Matrix Metalloproteinase-9 Is Required for Tumor Vasculogenesis but Not for Angiogenesis: Role of Bone Marrow-Derived Myelomonocytic Cells.
G-One Ahn et al.
Cancer Cell13: 193-205, 2008(March)
- 要約:腫瘍血管の形成には、既存の血管内皮細胞が増殖、遊走しておこる血管発芽によるAngiogenesisと、血液循環中の血管内皮前駆細胞(EPCs)が未分化のまま既存の血管周囲に集積、編入するVasculogenesisがある。今回著者らは、放射線照射にてAngiogenesisを抑制した部位に腫瘍を移植する実験系を用いた。腫瘍にはBM由来の細胞が浸潤しており、当初これはEPCsと思われたが、実はmonocyte/macrophage系のCD11b+ myelomonocytic cellであった。このCD11b+ cellの殆どにMMP-9が発現しており、MMP-9ノックアウトマウスの放射線照射した部位では著明に腫瘍の発育が抑制されるが、WTのbone marrowを移植すると、bone marrow由来のmyelomonocytic cellのimmature vesselsの形成によるvasculogenesisを介して腫瘍発育が促進された。MMP-9 inhibitorの投与や、CD11b+ cellの除去は、この腫瘍発育を抑制した。これより、CD11b+ myelomonocytic cellの発現するMMP-9を選択的に抑制することは、Radiation therapyとの併用により有効な癌の治療法となる可能性が示唆された。
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- 担当者:井上 光弘
- 論文:Restoring the Association of the T cell Receptor with CD8 Reverses Anergy in Human Tumor-Infiltrating Lymphocytes.
Demotte N. et al.
Immunity 28: 414-424, 2008(March)
- 要約:TCRとCD8はMHC-peptideの認識において協調的に働き、TCR単独でMHC-peptideと結合する場合と比較して10倍以上親和性が増強することが知られている。一方、抗原刺激の後に、ヒトCTLの細胞傷害活性及びHLA-ペプチド複合体との親和性は、一時的に減弱することがわかった。著者らは、この状況下において、CTLにおけるCD8とTCRの共在が損なわれていることをFRET (fluorescence resonance energy transfer)を用いて観察した。またCD8-TCRの共在化を阻害する因子を調べたところ、galectin-3が抗原刺激によってN-glycosylationを受けたTCRが持つN-acetyllactosamine(LacNAc) motifと結合することによりTCRがanchoringされ、共在化が阻害されることが示唆されており、galectin-3の競合的リガンドであるLacNAc処理によってCD8-TCRの共在が回復することが示された。ヒト固形癌、あるいは癌性腹水中のTumor-Infiltrating Lymphocytes(TILs)においてもCD8-TCR の共在が損なわれており、HLA- peptide tetramerとの結合性とCTL機能が減弱していることが示された。さらにTILsをex vivoにてLacNAcにて処理すると細胞傷害性が回復することが示された。このことにより抗腫瘍ワクチンにLacNAcを併用することが、腫瘍局所でのTILsのanergyを回復させ、抗腫瘍免疫に有用に働く可能性を示唆する。
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