日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:30)

2009年(平成21年)

Group-1

Group-2
3月27日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:Identification of discrete tumor-induced myeloid-derived suppressor cell subpopulations with distinct T cell-suppressive activity.
    Movahedi K., et al.
    Blood 15 (111): 4233-4244, 2008 (Apr.)
  • 要約:担癌状態や感染症、一部の自己免疫疾患等で出現するMyeloid-derived suppressor cells(MDSCs)は、免疫抑制性の効果を有しているが、その詳細な機能については、不明な点も多い。本論文では、担癌マウスを用いたMDSCsの解析を行っているが、その結果、MDSCsがmononuclear cell (MO-MDSCs)とpolymorphonuclear cell (PMN-MDSCs)の2つのsubfractionに分類されることを報告している。これら2つの群で、細胞表面マーカーを解析すると、MO-MDSCsは、CD11bLY6GLY6Chiであるのに対し、PMN-MDSCsでは、CD11bLY6GLY6Clowであった。また、両者ともに免疫抑制能を有するが、MO-MDSCsでは、NOがその抑制効果の一旦であったのに対し、PMN-MDSCsでは、NO依存性ではなく、IFN-γの存在が非常に重要であることが判明した。本論文を、最近のMDSCsに関する話題とともに紹介する。
  • 井上
  • 林田

3月13日(金)
  • 担当者:入江 厚
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
3月6日(金)
  • 要約:充実性腫瘍が増大するためには、腫瘍間質が必要である。腫瘍抗原を提示している間質細胞を認識するCD8+ CTL(このCTLはMHCの違いから癌細胞自体は認識できない)の1回の養子移入によって、長期間にわたり腫瘍増殖を抑制できた。移入したT細胞は長期間存続し、そしてCD11b+ の骨髄性で、F4/80+ あるいはGr1+ の間質細胞を継続して破壊した。高親和性TCRテトラマーにより、CD11b+F4/80+, CD11b+Gr1+ のどちらの間質細胞も周囲の癌細胞から癌抗原を捕捉していることが分かった。捕捉した抗原エピトープを提示することにより、これらの間質細胞は抗原特異的T細胞のターゲットとなった。骨髄性間質細胞は免疫抑制性で、血管新生を促進し、食作用を持っており、これらの骨髄性間質細胞を除去すると、移入したT細胞は活性化されたまま維持でき、血管新生は抑制され、腫瘍は吸収されることなく腫瘍サイズは定常状態のまま持続した。以上の結果は、CTLの養子免疫が直接的に腫瘍間質に治療効果があることを示しており、癌治療の新たな道を切り開くものである。
  • 入江
  • 松永
  • 井上
2月27日(金)
  • 担当者:今井 克憲
  • 論文:Hypoxia-induced lysyl oxidase is a critical mediator of bone marrow cell recruitment to form the premetastatic niche.
    Janine T. Erler, et al.
    Cancer Cell 15 (1): 35-44, 2009 (Jan.)
  • 要約: 近年、癌は転移前にすでに転移の最適位置(premetastatic niche)を準備しており、その臓器にはあらかじめ骨髄由来細胞が集積、浸潤していることがわかってきた。本論文において著者らは、腫瘍が低酸素状態に曝されると産生されるLOX(lysyl oxidase)が、このpremetastatic nicheの形成に重要であることを示した。腫瘍細胞から産生されたLOXは未来に転移が起こる臓器に集積し、基底膜のコラーゲンIVとcrosslinkする。ここに骨髄由来のCD11b+細胞が接着し、MMP-2の活性化を介して細胞外マトリックスをリモデリングし、CD11b+細胞の浸潤を促進、さらにCD11b+細胞の局所へのリクルートを亢進させる。この一連の反応により、腫瘍細胞が同部位に転移、発育するのに適した環境が整えられるのである。LOXを抑制すると、CD11b+細胞の浸潤、リクルートが阻害され、腫瘍の転移が抑制された。これらの結果より、premetastatic nicheの形成におけるLOXと骨髄由来細胞の役割が明確にされ、LOXを標的とした、転移性腫瘍に対する新たな治療法の可能性が示唆された。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
  • 冨田
1月30日(金)
  • 担当者:真崎 雄一
  • 論文:Overexpression of Interleukin-1β induces gastric inflammation and cancer and mobilizes myeloid-derived suppressor cells in mice.
    Tu, S. et al.
    Cancer Cell 14 (5): 408-419, 2008 (Nov.)
  • 要約:ヒトのIL-1b遺伝子には、多型が存在し、IL-1βの産生が増加するタイプの遺伝子型を持っている人では、胃がんのリスクが増加することが知られている。そこで、著者らは、胃特異的に、ヒトのIL-1βが発現するトランスジェニックマウスを作製し、IL-1βが、胃がんを引き起こすメカニズムを明らかにすることを試みた。ヒトのIL-1βが胃で発現するようなったトランスジェニックマウスでは、なんら刺激がない状態でも胃の炎症が見られるようになり、胃がんも観察されるようになった。これらの炎症部やがんの部分には、ミエロイド由来の抑制細胞(myeloid-derived suppressing cell: MDSC)が集まっており、さらに、T及びBリンパ球の欠損したトランスジェニックマウスでも、MDSCが集まり、胃異形成が観察された。一方、IL-1βは、IL-1RI/NF-kB系を介してMDSCを活性化し、IL-1レセプターのシグナルを抑えると、MDSCの胃へ移動が抑えられると共に、前腫瘍性の病変の発生も抑えられることが明らかとなった。以上の結果は、一つの炎症促進性のサイトカインが腫瘍を形成するに十分であること示しており、また、IL-1β、MDSC、発がんが、直接結びついていることを示している。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
1月16日(金)
  • 担当者:井上 光弘
  • 論文:CD4+CD25+ T regs control the TRAIL-dependent cytotoxicity of tumor-infiltrating DCs in rodent models of colon cancer.
    Stepan Roux et. al.
    J.Clini. Invest. 118(11): 3751-61, 2008(Nov.)
  • 要約:腫瘍の進行とともに、CD4+ CD25+ 制御性Tリンパ球( Tregs)の動員を含む、いくつかの機序による抗腫瘍免疫反応からの逃避が発生する。T regsはT細胞とNK細胞の細胞傷害機能を抑制するが、T regsが、腫瘍に浸潤している樹状細胞 (TIDCs) の細胞傷害活性に影響を及ぼすかどうかについてはは明らかにされていない。著者らは、ラットおよびマウスの大腸癌モデルにおいて、CD4+CD25+ Tregsが、CD11b+ TIDCsが示すTRAIL誘導性腫瘍細胞死を調節する能力を抑制することを示した。この両方の癌モデルにおいて、TLR2、TLR4、そしてTLR9を介して自然免疫系を活性化するBCGと、T regの減少をもたらすサイクロフォスファミド(CTX)のコンビネーションの治療によって腫瘍の根絶が可能であった。この治療によって、TRAIL依存性の機構により、腫瘍細胞に細胞死をもたらすCD11b+ TIDCsの数が著明に増加しているのが、明らかとなった。さらにCD11b+TIDCsにおけるTRAILの発現は、BCGによって誘導され、TLR2, TLR4, およびTLR9を介したシグナルに依存していた。In vivoでのT regsの導入は、BCGがCD11b+ TIDCに対し、TRAIL の発現を誘導する能力を無効化し、それによりCTX-BCG治療の効果が減弱した。
    本論文は、TregsがTIDCsの機能を変化させて抗腫瘍免疫反応を抑制する新しいメカニズムを示すものである。
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
1月9日(金)
  • 担当者:松永 雄亮
  • 論文:Induction of immunological tolerance by apoptotic cells requires caspase-dependent oxidation of high-mobility group box-1 protein.
    Kazama H. et al.
    Immunity. 29(1): 21-32, 2008(Jul.)
  • 要約:哺乳類の免疫系は、二つの異なる細胞死を識別している。ネクローシスにより炎症反応が起き獲得免疫が誘導される。一方、アポトーシスでは抗炎症反応が起き免疫寛容が促進される。著者らは、カスパーゼとミトコンドリアの果たす役割を中心に、アポトーシスによる免疫寛容の誘導機序について調べた。その結果、アポトーシスによる免疫寛容の誘導には活性酸素種(ROS)が重要であることが示された。ROS産生はカスパーゼがミトコンドリアに作用することにより誘導されていた。またROSは死細胞から放出され危険信号として働くHMGB1(high-mobility group box-1)を酸化し、HMGB1の免疫活性能を中和することが明らかとなった。ミトコンドリアにおけるカスパーゼ標的タンパクの変異体あるいはラジカルスカベンジャー用いてROSの活性を抑制すると、アポトーシスによる免疫寛容は誘導されず免疫反応が刺激された。さらに、アミノ酸置換によりHMGB1の酸化を阻止すると、アポトーシスによる免疫寛容は誘導されなかった。これらの結果により、カスパーゼ誘発性のミトコンドリア内イベントが、アポトーシス細胞による免疫寛容の誘導には重要であることが示唆された。
  • 入江
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上