日程
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Journal Club
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Progress report
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(8:30〜9:30)
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(9:30〜12:00)
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2011年(平成23年)
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Group-1
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Group-2
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6月24日(金) |
- 担当者:塚本 博丈
- 論文:CD4+T Cells support cytotoxic T lymphocyte priming by controlling lymph node input
Proc. Natl. Acad. USA 108: 8749-8754, 2011(May)
- 要約:ウイルス感染やがんなど、主に細胞内の抗原に対する免疫応答に必須な細胞傷害性CD8+ T細胞(CTL)の効果的な活性化の誘導は、CD4+T細胞の存在に大きく依存している(CD4ヘルプ)。著者らは、本論文でCTL応答における今まで知られていなかったCD4ヘルプについて報告している。本論文中で著者らはCD4+T細胞を欠損するCD4欠損マウス、およびMHCクラスII 欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染あるいは、骨髄由来樹状細胞による免疫に伴って起こるナイーブCD8+ T細胞の所属リンパ節への遊走が減少することを見出した。その結果、所属リンパ節での効率的な抗原特異的なCTLの増幅が減少した。また、所属リンパ節へとつながる細動脈の拡張がCD4+T細胞を欠損するマウスでは誘導されないことが分かった。このことから、CD4+ T細胞は、CD8+T細胞の所属リンパ節への流入を促進することにより、抗原特異的なCTLの活性化を助けることが示唆された。さらにこの現象は、所属リンパ節における樹状細胞の活性化、および活性化CD4+T細胞より供給されるCD40-CD40Lの相互作用に依存することが示された。本論文で提唱されるメカニズムは、ある抗原に対して特異的なナイーブCD8+T細胞の頻度が非常に低いにもかかわらず、免疫システムが特異的なCD8+T細胞のプライミングを引き起こすことのできる機構のひとつであると考えられる。そして、これらの結果は、CTL活性化の促進を効率よく誘導できるのは、細胞間のランダムな相互作用の結果ではなく、高度の調節された過程の結果であることを示す証拠である。
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6月17日(金) |
- 担当者:木庭 千尋
- 論文:Heparanase powers a chronic inflammatory circuit that promotets colotos-associated tumorigenesis in mice
The Journal of Clinical Investigation 121: 1709-1721, 2011(May)
- 要約:潰瘍性大腸炎(UC)は腸の慢性炎症疾患で、この炎症は大腸ガンの発症に密接に関連している。大腸上皮にヘパラナーゼ(HPSE)が発現している場合に、大腸ガンが発症しやすいことがわかっているが、UCとHPSEの関連は解明されていない。本研究では、大腸炎関連腫瘍形成の根底にある、大腸上皮免疫のクロストークにおけるHPSEの重要性が示された。UC患者および大腸炎モデルマウスより得られたサンプルを用い、UCの初期病巣ではHPSEが常に高発現し活性化していることが証明された。実験では、大腸炎に関連した大腸ガンを高頻度に引き起こすHPSEトランスジェニックマウスを用いた。著者らは、大腸上皮のHPSEと粘膜マクロファージの相互作用が慢性炎症を持続させ、NF-κBシグナルとSTAT3により特徴付けられる微小環境で、腫瘍形成を促進することを示した。HPSEの作用として本研究の結果では、腸内フローラとの相乗作用、マクロファージの刺激および活性化、TNF-α依存的なメカニズムの誘発、さらにカテプシンLの分泌促進など、大腸上皮の慢性炎症および腫瘍形成におけるHPSEの悪循環を示した。HPSEの活性化サイクルを抑制することにより、大腸炎および関連するガンの治療が大きく前進することが示唆された。
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6月10日(金) |
- 担当者:真崎 雄一
- 論文:The Nod2 Sensor Promotes Intestinal Pathogen Eradication via the Chemokine CCL2-Dependent Recruitment of Inflammatory Monocytes
Immunity 34: 769-780, 2011(May)
- 要約:細胞内センサーであるNod2は、細菌が感染すると活性化することが知られている。また、Nod2は、クローン病と関連していることも知られている。しかし、生体防御におけるNod2の機能については、不明な点が多い。今回、著者らは、Nod2のノックアウトマウスを使って、病原大腸菌のヒトの感染モデルである腸内細菌シトロバクター・ローデンチウムの排除に、Nod2が関わっていることを明らかにした。シトロバクターが感染すると、腸の上皮細胞や常在性のCD11b+貧食細胞ではなく、腸のストローマ細胞でNod2依存的にCCL2を産生された。また、常在性貧食細胞でなく、炎症性単球でTh1細胞の誘導に必要なIL-12が産生された。Nod2ノックアウトマウスでは、腸でのCCL2の産生が減少しており、そのため炎症性単球の浸潤が減少し、Th1細胞の免疫応答が減弱するため、細菌の排除機能が低下していた。さらに、感染したCcr2ノックアウトマウスにLy6Chi単球を養子移植すると、細菌の排除が回復することも明らかとなった。このようにNod2は、CCL2-CCR2依存的に腸内細菌の排除に働く炎症性単球の浸潤に関わっていることが明らかとなった。
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6月3日(金) |
- 担当者:池田 徳典
- 論文:RORγ drives production of the cytokine GM-CSF in helper T cells, which is essential for the effector phase of autoimmune neuroinflammation
Nature Immunology: 560-567, 2011(Apr)
- 要約:実験的自己免疫性脊髄炎(EAE)のような炎症性神経免疫疾患において、TH1細胞や
- TH17細胞が病態に関与していることはよく知られていることであるが、これらの細胞が産生する種々のサイトカインの中で、どのサイトカインが最も病態の進展に重要であるのかについてははっきりとはしていない。著者らは、EAEを誘導したGM-CSF欠損(Csf2-/-)mice由来のリンパ球を移入したC57BL/6(wild-type)miceでは、この移入リンパ球にIL-17AやIFN-γの産生を認めたにも関わらず、EAEの誘導が完全に抑制されることを提示している。一方で、IL-17A欠損(Il17a-/-)miceやIFN-γ欠損(Ifng-/-)mice由来のリンパ球を移入したwild-type miceではEAEは誘導可能で、これらの移入リンパ球では、GM-CSFの産生が確認された。また、IL-23と転写因子であるRORγtが、ヘルパーT細胞におけるGM-CSFの産生を促す一方で、IL-12やIFN-γ、IL-27はGM-CSFの産生を抑制した。以上のような結果から、GM-CSFはEAEのような炎症性神経免疫疾患の病態形成において、極めて重要な働きを持つことが示唆された。
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5月27日(金) |
- 担当者:高松 孝太郎
- 論文:Trafficking CD11b-Positive Blood Cells Deliver Therapeutic Genes to the Brain of Amyloid-Depositing Transgenic Mice
The Journal of Neuroscience 30: 9651-9658, 2010(Jul)
- 要約:中枢神経疾患に対する遺伝子治療では、どのような方法で脳内に広範かつ均一に治療遺伝子を導入するかが問題となる。またどのような単球が、中枢神経に移行するかは神経免疫学における疑問点の一つとなっている。本論文では、GFP発現ドナーから分離されたCD11b+細胞(主に単球)が、アルツハイマーモデルマウス脳内のアミロイド・プラーク周囲に自発的に集まることを示している。この細胞の単回注入では、循環血液中から24時間で消失(半減期90分)、組織からの半減期は約3日であった。ノントランスジェニックマウスの脳におけるGFP細胞の取り込みは最小限であったが、アミロイド・プラークを蓄積するトランスジェニックマウスでのGFP細胞の取り込みは、脳で劇的に増加、その一方で末梢臓器においてはやや減少した。アミロイドβの分解酵素である膜貫通型タンパク質ネプリライシンを分泌型として遺伝子導入したGFP-CD11b+細胞による治療では、アミロイド・プラークの蓄積を完全に予防することができた。これらの結果は、自己の末梢血由来細胞が有するホーミング特性を遺伝子治療に利用することで、中枢神経の広範にアクセスが可能となり、なおかつ遺伝子の発現が損傷部位に限られ、拒絶反応のリスクが低く、副作用の発現時には遺伝子発現を減少できることが示唆された。
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5月13日(金) |
- 担当者:羽賀 栄理子
- 論文:CD169-Positive Macrophages Dominate Antitumor Immunity by Crosspresenting Dead Cell-Associated Antigens.
Immunity 34: 85-95, 2011(Jan)
- 要約:腫瘍特異的CTLの活性化は、抗腫瘍免疫の誘導に重要であると考えられている。これらCD8+T細胞を活性化するためには、最初に抗原提示細胞が腫瘍細胞関連抗原を捕捉しなければならない。主な腫瘍抗原の源は、死んだ腫瘍細胞であるが、これらの抗原を所属リンパ節に存在する抗原提示細胞がどのように抗原をクロスプレゼンテーションするのかはあまり知られていない。著者らは、CD169+マクロファージが、リンパの流れによって移動してきた腫瘍抗原を、ホスファチジルセリン依存的に貧食し、腫瘍関連抗原をCD8+T細胞にクロスプレゼンテーションすることを示した。放射線照射した腫瘍細胞の皮下接種は、その後に投与した生きた腫瘍の定着を抑制するが、CD169+マクロファージdepletionマウスにおける実験で、抗原特異的CD8+T細胞の活性化およびその後の抗腫瘍免疫反応が減弱した。さらに、クロスプレゼンテーション能力が知られている、migratory DCs およびリンパ節局在conventional DCs は、腫瘍抗原のクロスプレゼンテーションに必須でないことが示唆された。著者らは、腫瘍抗原特異的CD8+T細胞を早い段階で活性化する、リンパ節に局在する抗原提示細胞としてCD169+マクロファージの重要性を示した。
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5月6日(金) |
- 担当者:矢津田 旬二
- 論文:Contribution of IL-17−producing γδ T cells to the efficacy of anticancer chemotherapy
The Journal of Experimental Medicine: 491-503, 2011(Mar)
- 要約:免疫原性を持つ細胞死をおこすことで、アントラサイクリンやオキサリプラチンといった抗癌剤は腫瘍特異的INF-g産生CD8+αβTリンパ球(Tcl CTLs)を誘導する。これらは至適治療効果に中心的な存在である。化学療法が、IL-17産生gd(Vγ4+とVγ6+)Tリンパ球(γδT17cell)の急速で、顕著な腫瘍浸潤を誘導し、腫瘍床へTcl CTLsを導く。TCRδ-/-もしくはVγ4/6-/-マウスでは化学療法の治療効果が減弱し、腫瘍浸潤 T cellからIL-17産生されず、Tcl CTLs が腫瘍に浸潤できない。γδT17はIL-17AとIL-22両者を産生するが、機能的IL-17A_IL-17R pathwayの欠如が、腫瘍特異的 T cell 反応を有意に減弱させた。養子導入したγδ T cell は IL-17A-/- マウスでの化学療法の効果を回復させた。IL-1R1もしくはIL-17Aがない状態では、養子導入されたγδT cell の抗腫瘍効果は失われた。Conventional helper CD4+αβ T cellは化学療法後にIL-17を産生しなかった。以上よりγδT17が化学療法が誘導する抗癌剤免疫応答に決定的な役割を果たすと結論づけた。
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4月22日(金) |
- 担当者:入江 厚
- 論文:Soluble plasma HLA peptidome as a potential source for cancer biomarkers.
PNAS 107: 18769-18776, 2010(Nov)
- 要約:HLA分子は、膜結合性の輸送タンパク質で、細胞内から細胞表面へとペプチドを輸送し、これをT細胞に提示する。少量の可溶性HLA分子(sHLA)は常に血中へ放出されているが、多くの癌細胞は、免疫監視から逃れるため大量のsHLAを血中に放出する。著者らはsHLA分子も、完全長の膜に存在するHLA分子(mHLA)と同様のレパートリーのペプチドを結合していることを明らかにした。これにより、1回のアフィニティ精製操作で得た血漿中のsHLAから、質量分析計を用いた膨大なsHLAペプチドームの同定を、わずか数mlの患者血液の採取で可能とする、血液による簡単で汎用性の高い癌診断法の開発の礎が築かれた。この新しい方法の有効性は、多発性骨髄腫と白血病患者の血漿と腫瘍細胞、健常人の血漿、培養腫瘍細胞を用いて確かめられた。癌患者のsHLAペプチドームに含まれる数千種類のペプチドが同定され、その中には既知の癌関連ペプチドがいくつか存在した。また、HLA分子に提示されるペプチドは、細胞内タンパク質の分解物であるため、本sHLAぺプチドミクス法は、腫瘍細胞内でのタンパク質合成や代謝のパターンを解析する新法を提供する道を開くものである。
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4月15日(金)
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- 担当者:冨田 雄介
- 論文:High prevalence of low affinity peptide-MHC II tetramer-negative effectors during polyclonal CD4+ T cell responses.
Journal of Experimental Medicine 208: 81-90, 2011(Jan)
- 要約:適応免疫はT細胞が抗原を認識することから始まる。今日まで、affinityの低いものから高いものまで混在する、ポリクローナルなT細胞レパートリーのaffinityを評価することは不可能であった。そのため、low affinity T細胞の反応性については知られていない。著者らは、高感度 2 dimensional binding assayを用いて、ポリクローナルな自己抗原 myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) 特異的 CD4+T細胞、および外来抗原であるlymphocytic choriomeningitis virus (LCMV) 特異的CD4+T細胞中にlow affinity T細胞を同定した。low affinity CD4+T細胞はペプチド-MHCクラスII テトラマーで検出できず、少なくともhigh affinity 細胞と同程度に高頻度に存在し、抗原特異的に反応してサイトカインを産生した。したがって、high affinity CD4+T細胞と同程度に、low affinityCD4+T細胞は自己免疫、病原体特異的免疫反応の両方の病態において重要なエフェクター細胞として機能していると考えられる。
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4月8日(金) |
- 担当者:塚本 博丈
- 論文:CD4+ T Cells Comtribute to the Remodeling of the Microenvironment Required for Sustained Tumor Regression upon Oncogene lnactivation.
Cancer Cell 18: 485-498, 2010 (Oct)
- 要約:がん細胞では特定の「がん遺伝子」の増幅が見られ、これががん発生のメカニズムの解明やがんの性質の特定(予後の予測)、治療方針の決定(新たな治療薬の開発)に利用される。がん遺伝子が過剰発現しているがんでは、そのがん遺伝子発現が抑えられてしまうと、正常細胞と同様に振る舞うことなく、たちまち死んでしまうという「がん遺伝子依存(oncogene addiction)」という現象が起こることが最近提唱されている。そして、この現象は、Greevecなどの過剰発現しているがん遺伝子を標的とした抗がん剤が効果を発揮するメカニズムと一つであると考えられ、注目されている。免疫担当細胞はがん細胞の排除、あるいは進行に大きく関与することが一般的に知られているが、本論文では初めて、免疫担当細胞、特にCD4+T細胞とoncogene addiction との関わりについて検討している。Myc遺伝子によって引き起こされるoncogene addictionを強制的に遮断することが可能なマウスモデルでは、野生型マウスではMyc遺伝子の不活性化でがんは退縮するが、免疫不全マウスでは一旦寛解するものの、再度がん細胞が増生する。このことから、免疫細胞はoncogene addictionに伴う過程で何らかの役割をしていることが示唆される。そして筆者らは本論文で、CD4+T細胞が、がん遺伝子不活性化に伴って誘導されるがん細胞の老化、血管新生の停止、最終的にはがんの退縮を促進する役割を担うことを実験的に証明した。さらに、がん遺伝子不活性化により、宿主の体内で抗腫瘍効果を発揮するサイトカイン、ケモカイン等が誘導され、その一つであるthrombospondin-1,2は、oncogene addictionに起因するがん退縮において重要な役割を担うことを示している。この論文は、がん免疫、特にがん細胞とがんを取り巻く宿主の環境の相互採用におけるCD4+T細胞の多面的な役割を示唆するものである。
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4月1日(金) |
- 担当者:木庭 千尋
- 論文:CD11c+Dendritic Cells and B Cells Contribute to the Tumoricidal Activity of Anti-DR5 Antibody Therapy in Established Tumors.
The Journal of Immunology, 185: 532-541, 2010 (Jul)
- 要約:抗体を用いた腫瘍の細胞死誘導レセプターDR4とDR5の選択的ターゲティングは、前臨床試験と臨床試験で抗腫瘍効果が実証されているが、細胞あるいは分子レベルでのメカニズムの解明は不十分である。本研究は、TRAIL感受性B6マウスを用いた実験で、MC38大腸腺種が生着しているマウスにおける抗DR5抗体MD5-1の腫瘍拒絶の初期における自然免疫および獲得免疫に対する作用が確認された。Fcレセプターを介したMD5-1のクロスリンクは、TRAILレセプター依存的な腫瘍細胞アポトーシスを誘導しMC38大腸腺種の成長を顕著に抑制することを示した。DR5、TRAIL、パーフォリン、FasL、TNFを欠失させたマウスを用いた実験でも、抗DR5抗体による治療効果が確認された。対照的に、B細胞あるいはCD11+DC欠損マウスでは抗DR5抗体治療は効果が見られず、このことからこれらの細胞が重要な役割を担っていることが示唆された。興味深いことに、TUNEL活性によるDR5抗体を介した腫瘍細胞のアポトーシスの検出は、B細胞欠乏マウスでは完全に失われていたが、CD11c+DC欠乏マウスではアポトーシスが確認された。これらのデータから、B細胞に依存してDR5が腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こしており、またCD11c+DCが抗DR5の抗腫瘍活性発現に寄与することが示された。
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