人の大脳皮質は、記憶、情動、思考、行動の中枢である。人は、そのような脳の構造や機能を人工的に模倣することはできていない。同様に、Ramón y
Cajalが残した「中枢神経系は再生しない」という言葉にあるように、人は、外傷、虚血、脳出血で生じた脳障害を治療することはできていない。しかし、最近、一部の神経病理学者は、脳虚血後に脳の表面の軟髄膜に神経前駆細胞が現れることを報告している。その様な中、私たちは、胎児期の神経前駆細胞の一部は、細胞移動で脳軟膜外の軟髄膜に至り、成体脳でも温存されていることを明らかにした。そして、軟髄膜の神経前駆細胞を様々な方法で刺激すると、神経幹細胞マーカーのNestinを発現し、更に刺激を繰り返すと、大脳新皮質の抑制性神経細胞や錐体細胞を新生することが分かった。この発見は、私たちに、傷害を受けた中枢神経系の再生法をもたらすものである。本分野では総力を挙げて、中枢神経系の治療法を創出するために、本研究を進めている
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- 劇的に再生医療の手法が発展する中、中枢神経系、特に大脳新皮質では、その機能を回復する手法は現在全くありません。スペインの神経解剖学者カハールも、中枢神経系は再生能力を持たないと言い残しています。 その様な中、私達は再度、脳の発生過程を精査し、神経前駆細胞の一部が脳の外表面に移動して温存されていることを発見しました。これらの細胞は、成体脳の外表面で刺激に応じて神経細胞を生み出すことも見出しました。この発見は、大脳新皮質の再生医療の出発点となります。 研究者を目指す皆さんも、そのような研究に参加しませんか?熱意ある学生さんであれば経歴は問いません。
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最近の成果
成体大脳新皮質での神経細胞新生現象を発見しました。
▼ 学会abstract
<Tangential migration and proliferation of intermediate progenitors of
GABAergic neuron in the mouse telencephalon.>
(Wu et al., Development 2011,138, 2499-2509)
▼論文情報